地球温暖化、新興国の急成長、世界人口・都市人口の増加を背景とした地球資源の枯渇の懸念などによりエネルギーの有効活用が全世界の共通の課題となっており、スマートグリッド、スマートシティ、スマートコミュニティ等を構築するため各国で多くのプロジェクトが進められている。
電気、電子機器においても地球温暖化、CO2削減等といった問題に貢献できる商品の開発が行われており、それらに使用される電子デバイスも同様で当社の主力商品であるアルミ電解コンデンサにおいても小形化や高性能化の市場要求は非常に高い。
アルミ電解コンデンサの中で導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ(以下固体電解コンデンサと記す)は、他のコンデンサに比べて使用温度範囲が広く小形で低ESR、高リプル電流という高性能化の特徴を持っている一方で、高耐圧(35V以上)の実現が難しかった。そのため固体電解コンデンサは回路部品としては25V以下での使用に限られ、使用機器も限定されていた。
固体電解コンデンサの高耐圧化は、大きなテーマとして以前よりコンデンサメーカ各社で研究が行われており、当社では独自の技術で高耐圧化を実現した固体電解コンデンサPZAシリーズ(写真-1)を商品化した。本稿ではこのPZAシリーズについて紹介する。

| 製品規格 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 定格電圧範囲 | 35~63V.DC | |||
| 静電容量範囲 | 10 ~ 150µF | |||
| カテゴリ温度範囲 | -55 ~ +105℃ | |||
| 製品寸法 | Φ6.3×7L~Φ10×12.5L | |||
| 寿命 | 105℃ 3,000時間 | |||
| 標準品一覧表 | ||||
|---|---|---|---|---|
| WV (V.DC) |
Cap (µF) |
Size | Ripple | ESR |
| 35 | 22 | 6.3×7 | 900 | 64 |
| 33 | 8×7 | 1200 | 55 | |
| 56 | 8×9 | 1900 | 29 | |
| 82 | 8×12 | 2300 | 27 | |
| 150 | 10×12.5 | 2700 | 26 | |
| 50 | 12 | 6.3×7 | 800 | 81 |
| 18 | 8×7 | 1100 | 63 | |
| 33 | 8×9 | 1900 | 32 | |
| 39 | 8×12 | 2200 | 29 | |
| 68 | 10×12.5 | 2600 | 28 | |
| 標準品一覧表 | ||||
|---|---|---|---|---|
| WV (V.DC) |
Cap (µF) |
Size | Ripple | ESR |
| 63 | 10 | 8×7 | 1000 | 75 |
| 22 | 8×9 | 1800 | 35 | |
| 27 | 8×12 | 2100 | 33 | |
| 47 | 10×12.5 | 2600 | 29 | |
Size : φ D×L (mm)
Ripple : mA r.m.s/105℃,100kHz
ESR : mΩ ,Max/20℃,100kHz
非固体アルミ電解コンデンサ(以下アルミ電解コンデンサと記す)は電解液が使用されるため、イオン伝導による電荷のやり取りが行われる。一方、固体電解コンデンサでは導電性高分子の電子伝導による電荷のやり取りが行われるため、その導電率は4~5桁程度違うとされ、固体電解コンデンサは非常に高導電率、すなわち低ESRが実現できる。そのため高速度応答が要求される機器や高リプル電流を求められる機器には適している。
しかし、導電性高分子は電解液に比べ誘電体皮膜の修復性に乏しい等々から固体電解コンデンサの耐電圧は25V程度が上限とされ、機器回路においては使用できない電圧ラインもあった。こうした背景に加え、機器の小形化や高性能化実現に向けて、固体電解コンデンサの高耐圧化の要求が高まっていた。
PZAシリーズは、当社独自のポリマー技術によって高耐圧化を実現した商品であり、従来固体コンデンサの上限電圧とされていた25Vをはるかに超える高耐圧化を図ったもので、35~63Vまでをラインナップした固体電解コンデンサである。また、アルミ電解コンデンサに比べて高周波域のインピーダンス及びESRが格段に低減され、更なる高リプル電流化が可能。更には周囲温度の変動による特性変化が非常に小さいく、実使用温度に於いても長寿命化が実現可能などといった特長を持ったコンデンサである。
PZAシリーズを使用することで、以下のようなことが期待できる。
① アルミ電解コンデンサに比べ、小形で低ESR・高リプルが可能となるため、機器の更なる小形化が可能になる。
② アルミ電解コンデンサの複数個使いの員数削減ができるようになり、コストダウンが期待できる。
③ 極低温から高温まで常温と変わらない特性を持つため、今まで機器使用時の周囲温度による特性変化を配慮して、数ランク大きいサイズのアルミ電解コンデンサを選定していたところを外形寸法の小さい固体電解コンデンサを使用することが可能となり、機器の小形化を図ることができる。
④ アルミ電解コンデンサの場合、低温性能から極低温での安定した動作を可能にするために付加していた回路の削除を図ることが可能となる。
⑤ 常温域での寿命が長くなるため、遠隔地や高所で使用される機器などのメンテナンスの負担頻度低減が図れる。
⑥ アルミ電解コンデンサはコンデンサ内部に電解液を有しているため、ポッティングや防湿剤の使用には多くの制限があったが、固体コンデンサはこの制約が低減され、今まで使用できなかったポッティング条件での使用が可能となる領域が増加する。
固体電解コンデンサの高耐圧化のための当社独自の技術を説明するために、従来の固体電解コンデンサが“何故耐電圧が低かったのか”を説明する必要がある。
ノーベル賞を受賞された白川博士による導電性高分子の発見以来、様々な高分子の種類が固体電解コンデンサ用として検討されてきたが、ここではポリ-3,4-ジオキシチオフェン(以下 PEDOT)を例として取り上げる。
従来の固体電解コンデンサは、コンデンサ素子の内部で導電性高分子を合成(重合)する方法で製造してきた。導電性高分子の重合反応を次の(図-1)に示す。単量体のエチレンジオキシチオフェン(EDOT)を酸化重合によって高分子(PEDOT)を合成する。この重合反応には原料となるEDOT(モノマー)と酸化剤として強酸系鉄化合物を用いる。

図―1 PEDOTの酸化による重合反応
この重合反応は、コンデンサ特性に少なからず影響を及ぼし、耐電圧の低下や寿命劣化を起こす要因となっている。
コンデンサの耐圧の低下は、重合反応時に生成される水素イオンが陽極箔表面にある酸化皮膜を劣化破壊することが主原因と考えられている。
また重合反応に使用された鉄化合物や強酸などは副生成物となってコンデンサ素子内部に滞留し、高温負荷や耐湿負荷等において漏れ電流の増大や短絡等の現象を引起する要因になってしまう。前記のようなリスクを回避する方法が種々検討されてきた。
コンデンサ素子の劣化を抑制し、高導電性PEDOTの合成と素子の内部へ充填がこのタイプのコンデンサの製造上の重要なポイントである。またコンデンサの特性を安定させる安定化剤や反応抑制剤の存在は必要不可欠になってくる。ここで問題となるのは重合反応を阻害する場合がある安定化剤を用いることができないこと、重合終了後(充填終了後)に素子が固体物質で覆われてしまうため、安定化剤の添加が困難になることである。
高電導性のPEDOTを効率よく充填し、コンデンサ素子の高い性能ポテンシャルを維持しながら、さらにコンデンサの安定化剤も含有させる。これがPZAシリーズの製造開発のコンセプトである。以下にその製造要件を記す。
(a) 重合反応時に生成される水素イオンによる陽極箔へのダメージをなくす。
(b) 重合反応時の残渣、残留鉄化合物や強酸を含有しない高純度のPEDOTを使用する。
(c) 高導電性PEDOTをコンデンサ素子内部に効率よく充填する。
(d) 高温寿命、耐湿等コンデンサ特性の信頼性を維持するための安定化剤や反応抑制剤を添加する。
PZAシリーズでは、高純度PEDOTを採用することで、素子へのダメージを最小限にしてコンデンサの高圧化を可能にした。さらに新規充填技術で高容量化と低ESRの高性能特性を発現することにも成功した。
また採用した高純度PEDOTは素子内部での重合反応を伴わないため、従来コンデンサ素子に添加することが難しかった特性安定化剤や反応抑制剤を容易に添加することができ、コンデンサの信頼性が飛躍的に向上した。安定化剤と反応抑制剤は実使用時に皮膜破損が起きた場合、電解液を使用したアルミ電解コンデンサと同様に皮膜の修復をしたり、特性を安定化する。
新技術によって添加した特性安定化剤のイメージ図を(図-2)に示す。

図-2 特性安定化剤の皮膜修復 イメージ図
この特性安定化剤および修復成分は、初期電気特性をはじめ実使用や寿命試験においても、特性に悪影響を与える事なく、良好な特性を維持するために使用される。過酷な条件を含めコンデンサの特性異常になるまでの期間の間に、この特性安定化剤から放出される修復成分が消費されつくす事のないように十分な配合量を設計している。
グラフ-1は、これまで実現できなかった63Vの寿命試験のデータ(静電容量変化率、ESRの変化)である。このデータのように長時間電気特性は安定している。

グラフ-1:PZAシリーズ高温負荷試験結果(静電容量変化率/ESR)
また、アルミ電解コンデンサでは-25℃より徐々に、特に-40℃を超えた低温ではインピーダンスの上昇・静電容量出現率の減少が見られるが、PZAシリーズはグラフ-2のように-55~+105℃の温度範囲での特性変化は極僅かである。

グラフ-2:PZAシリーズと非固体アルミ電解コンデンサのESR温度特性
製造プロセスから故障末期までの全て点において、耐ショート性向上ならびに修復性能付与を実現した事によって素子本来の耐圧を十分に活かす事のできる高耐圧の固体電解コンデンサを実現できた。
PZAシリーズは、独自の技術で導電性高分子固体電解コンデンサとしてはカバーできない高電圧帯までラインナップした固体コンデンサで、非固体電解コンデンサでは実現できなかった低ESR、高リプル電流、低温安定性、長寿命化といった高性能を可能にしたコンデンサとして期待されている。
当社では、更に多くの用途に貢献できる電子デバイスとして導電性高分子固体電解コンデンサのラインナップを充実していく予定である。
また機器の小形化は、コスト、性能、環境保全等から今後も進むものと考えられる。当社では、あらゆる用途に適したコンデンサを提案すべく固体コンデンサに限らず、非固体コンデンサ、フィルムコンデンサ、電気二重層キャパシタの開発を積極的に進めていく考えである。
※本稿は、2013年1月30日発行の電波新聞「ハイテクノロジー」に記載記事を基に加筆、修正したものです。
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