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アルミニウム電解コンデンサ (チップ形)

アルミニウム電解コンデンサに定格電圧を超える電圧(過電圧)が印加されたとき、どのような影響がありますか?

アルミニウム電解コンデンサの陽極箔には、最高使用温度中で定格電圧を連続印加しても耐え得るだけの酸化皮膜が形成されています。

この酸化皮膜の耐圧以上の電圧が印加された場合(過電圧)、アルミニウム電解コンデンサの陽極箔は印加電圧に相当する酸化皮膜が形成されます。この時の反応により、ガス発生しコンデンサの内圧が上昇します。コンデンサの特性としては、静電容量の減少、損失角の正接の増加として現れてきます。
ガス発生量は、印加電圧が高い程、コンデンサの周囲温度が高い程多く、これにつれて内圧も高くなり、封口材(ゴムパッキング)の膨らみ、更には安全装置の作動(安全装置のない製品はゴムパッキングの飛び出し)などの現象が発生することがあります。従って、コンデンサにその定格電圧を超える電圧が印加される回路での使用は避けて下さい。

過電圧印加時の構造破壊モードには以下のものがあります。
(1) オープン
安全装置が作動し(又はゴムパッキングが飛び出し)、コンデンサの内部の電解液が外部に拡散してドライアップに至り、オープン状態となります。
(2) ショート
陽極箔の耐圧、電解液の耐圧、セパレータ紙の耐圧より高い電圧が印加され、絶縁が保てなくなると絶縁破壊をおこしショートに至ります。

アルミニウム電解コンデンサに逆極性の電圧が印加されたとき、どのような影響がありますか?

有極性アルミニウム電解コンデンサの陽極箔は、コンデンサの定格電圧に応じた耐圧を持たせる様強制的に化成処理を行っていますが、陰極箔は耐圧を持たせる様な化成処理をしていない為に、本質的には耐圧がありません。しかしアルミニウムは活性な金属なため、空気中の酸素と反応し自然に酸化皮膜が形成され、この皮膜により常温中にて1~1.5V程度の耐圧があると言われております。この皮膜は均一ではなく不安定で、部分的に又はロットによりばらつきがあるため、陰極の耐圧保証はしておりません。極性が反転する回路には無極性アルミニウム電解コンデンサをご使用することを推奨します。有極性アルミニウム電解コンデンサの陰極箔にその耐圧以上の電圧が印加された場合、電流が流れ陰極箔と電解液中の水分が電気分解され、電気分解により発生した酸素と陰極箔が反応し、陰極箔表面に酸化皮膜を形成します(陰極箔の化成)。この反応により陰極箔容量は低下し、コンデンサの容量は陽極箔と陰極箔の合成容量となっている為、コンデンサの容量は減少し、さらに損失角の正接(tanδ)も増加します。

又、この反応によりコンデンサ内部ではガス発生する為、内部圧力が上昇します。印加電圧が高い程、又、コンデンサ周囲温度が高い程ガスの発生量は多くなり、印加電圧,温度によりコンデンサのゴムパッキングが膨らんだり、場合によっては安全装置が作動したり、安全装置がないコンデンサはゴムパッキングが飛び出す事があります。従って、コンデンサの極性逆接続、逆電圧が印加されるような回路での使用は避けて下さい。

アルミニウム電解コンデンサには周波数依存性はありますか?

アルミニウム電解コンデンサの各特性には周波数依存性があります。

下図にインピーダンスとESRについての代表的な周波数特性のグラフを記します。インピーダンスは共振点まで減少し共振周波数以上では増加します。この変化は、誘電体としての酸化アルミニウム皮膜の性質や電解液の特性,コンデンサの構造などの影響によるものです。この特性値はシリーズや容量によって異なりますので、実際に使用するコンデンサを使って実機で動作確認を行うなど回路動作に問題のないことを確認する必要があります。

代表的な周波数特性のグラフ

アルミニウム電解コンデンサには温度依存性はありますか?

コンデンサの特性は規定された温度範囲内でも一定ではありません。下図に容量とインピーダンスの温度変化の事例を示します。アルミニウム電解コンデンサは電解液の特性から高温で容量は増加しインピーダンスは低くなります。低温になれば容量は減少しインピーダンスは増加します。この特性値はシリーズや容量によって異なりますので、実際に使用するコンデンサを使って実機で動作確認を行うなど回路動作に問題のないことを確認する必要があります。

また、カテゴリー温度上限を超えて使用した場合には、電解液の蒸気圧の上昇や通電による電気化学反応で、コンデンサ内部の圧力が高くなり破裂や液漏れの原因となります。
容量とインピーダンスの温度変化の事例

アルミニウム電解コンデンサの故障モードは何ですか?

アルミニウム電解コンデンサはコンデンサ内部に電解液が注入されており、封止材をアルミケースで加締めることで気密性を保っています。しかし、電解液は封止材の分子間を通って蒸発するので内部の電解液の量は経時的に減少していきます。この結果、コンデンサの容量は減少し抵抗は増加して最終的にはオープン故障に至ります。ただし、環境条件や基板取り付け条件などが各製品の規定を超えている場合などにおいてはご使用条件により故障モードは異なります。

代表的な故障モードとその要因について、カタログおよびテクニカルノートの中に示されていますのでご参照ください。

アルミニウム電解コンデンサの実使用時の寿命推定は可能ですか?

アルミニウム電解コンデンサの寿命は温度依存性が高く、実際に使用される環境温度やコンデンサの温度,コンデンサの自己発熱温度などより推定することが可能です。

寿命を推定するに当たっては加速試験データをもとに求めた寿命推定式を用います。コンデンサ形状やシリーズにより異なりますのでテクニカルノートの「寿命について」の項目をご参照ください。なお、この推定式の結果は保証されたものではありませんので参考値として取り扱いください。

長期保管されたアルミニウム電解コンデンサは使用しても問題ないですか?

アルミニウム電解コンデンサを長期間保管した場合、リード線表面の酸化によりはんだ付け性に影響が出たり、漏れ電流の増加によって回路の誤作動を引き起こすことがあります。また、未使用状態であっても特性劣化が進みます。

長期保管されたものでも電圧処理を実施することで漏れ電流は初期レベルまで低減できるので、漏れ電流の影響による誤動作を防止することは可能です。しかし、放置期間中に劣化したその他の特性はもとに戻ることはありませんので長期保管品の使用については、セットの期待寿命と保管期間,保管条件を考慮してください。なお、保管条件に関する注意事項については、使用上の注意事項に記載されていますので参照ください。

アルミニウム電解コンデンサは高所で使用しても問題ないですか?

山岳や航空機等の高所で使用される機器にアルミニウム電解コンデンサを使用する場合、外気圧の低下によりコンデンサ内部の圧力が高くなることが想定されます。しかし、高度10,000m程度の大気中での使用についてはコンデンサの封止性能上問題はありません。ただし、高度が高くなるにつれて気温が低下しますので、アルミニウム電解コンデンサの特性に温度依存性のあるを考慮して機器の動作確認をお願いします。