製品情報:薄膜高分子積層コンデンサ(PMLCAP)

薄膜高分子積層コンデンサ(PMLCAP) テクニカルノート

1. はじめに

 電子機器の小型化・高性能化に伴い、その電気回路に使われる電子部品にも小型化・高性能化・高信頼性化が常に求められています。ルビコンではその市場要求に応え、従来の積層フィルムコンデンサを大幅に小型化した新しいタイプの積層フィルムコンデンサPMLCAPを提供しています。
 PMLCAPは、小型軽量、大容量、良好な周波数特性/バイアス特性、低誘電吸収、低漏れ電流、高耐熱性等の特長を有しており、AV機器、通信機器、ウエアラブル機器、環境発電などの様々なアプリケーションの高付加価値化に貢献できる製品です。

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2. PMLとは

Polymer Multi - Layer Capacitor = PMLCAP

写真1 PMLCAP外観  PMLCAPの呼称は、Polymer Multi-Layer Capacitorの頭文字から取ったものであり、高分子(ポリマー)を多積層した表面実装形のコンデンサを意味します。従来のフィルムコンデンサにも、表面実装形はありますが、PMLCAPがそれと大きく異なる点は、誘電体の種類、更にはその製造方法にあります。
  PMLCAPの誘電体厚は、1μm以下で、従来のフィルムコンデンサに使われている二軸延伸フィルムでは製造が困難な厚さです。
  ルビコンは、この薄膜誘電体層を形成する技術を確立することにより、画期的な高容量・小型のフィルムコンデンサを製造する事に成功しました。また、PMLCAPで使用している誘電体樹脂は耐熱性の高い熱硬化性樹脂であり、熱可塑性樹脂を使用する従来のフィルムコンデンサよりも耐熱性に優れています。

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3. 製造技術

写真2 フィルムコンデンサとのサイズ比較例(10µF品),写真3 積層構造(電子顕微鏡:5000倍)誘電体厚 0.4µm   従来のフィルムコンデンサは、PP、PET、PPS、PENなどのフィルム上に金属が蒸着されたもの(メタライズドタイプ)、またはこれらフィルムと金属箔をセットとし(箔タイプ)、巻回もしくは積層することにより、リード線タイプ、円筒タイプ、角型タイプ、あるいはチップタイプとして製造されています。しかし、このような製法では、市販のフィルムを使用することから、その小型化追求(一層厚の薄膜化)には自ずと限界がありました。そこでルビコンでは、フィルムコンデンサの小型化に繋がる薄膜の誘電体層を形成する製造技術の開発に着手し、2006年にPMLCAP量産化に成功しました。
  PMLCAPは電子線硬化型樹脂を誘電体材料とし、真空蒸着重合技術を製造方法に採用しています。即ち、真空槽中において薄膜の誘電体層を重合形成し、続いてその上に内部電極層(アルミニウム)をパターン化して形成する。これを交互に連続的に行い、コンデンサの母素子となる積層体を作り上げます。この母素子を製品単位に切り出した後、外部電極の形成を行い製品化します。真空蒸着法を採用することで、誘電体層はサブミクロン単位の厚さでありながらピンホールフリーで、均一な成膜が可能となっています。またその積層数は、数千から1万層余りにまで達します。

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4. PMLCAPの構造

 PMLCAPの素子部(内部構造)は、誘電体と内部電極のみで構成されており、誘電体材料はアクリル系のポリマーを採用しています。外部電極は複数の金属層から形成されており、外側から、錫メッキ、銅メッキ、そして素子部との接続を担う真鍮メタリコンで構成されています。誘電体に耐熱性の高い材料を採用したことにより、260ºCピークの2回鉛フリーリフローはんだを保証しています。
 故障モードは、従来のフィルムコンデンサと同様にセルフヒーリング効果を有しますので、「オープンモード」となります。また、環境負荷物質を含有せずRoHS規制に対応しています。

図1 外部電極構造

図1 外部電極構造

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5. PMLCAPと積層フィルムコンデンサ、積層セラミックコンデンサとの比較

 PMLCAPの電気的特性は、ポリエステルフィルムコンデンサ(マイラコンデンサ)とほぼ同等です。
 PMLCAPは、積層フィルムコンデンサと比べると1層厚が薄いため同電圧・容量でのサイズが小さく、大容量品(~22μF)のラインアップがあるのが特長です。また、高誘電率系の積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multi-Layer Ceramic Capacitor)と比べると,圧電効果がないため、うなり音発生が少なく、且つ誘電吸収小さい、直流バイアス(DCバイアス)印加による容量減少が無いなどの特長を有しています。

表1 コンデンサ特性の比較

種別PMLCAP積層フィルムコンデンサ積層セラミックコンデンサ
誘電体電子線硬化型樹脂
(アクリル)
樹脂フィルム
(PEN,PPS)
高誘電率系セラミック
(BaTi03)
誘電体厚<1µm/層≥3µm/層<1µm/層
比誘電率約3約32,000~5,000
内部電極蒸着アルミニウム蒸着アルミニウムニッケルペースト
定格電圧16Vdc~200Vdc16Vdc~630Vdc2Vdc~3,150Vdc
静電容量0.0001µF~22µF0.0001µF~1µF51pF~470µF
温度範囲-55ºC~+125ºC-55ºC~+125ºC-55ºC~+150ºC(X8R)
形状
特徴圧電効果がないため、
異音発生が少なく
DCバイアス特性に優れている。
圧電効果がないため、
異音発生が少なく
DCバイアス特性に優れている。
圧電効果があるため、
DCバイアス特性が劣る。
温度補償用セラミックは、
形状は大きいが特性は優れている。
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6. PMLCAPの特性・特長

 特性の注目すべき点として、『直流バイアス印加による容量の変化がないこと』、『温度変化による容量の変化が少ないこと』、『圧電効果に起因する「うなり音」や「高調波歪み」が小さいこと』、『誘電吸収が小さいこと』、『高温度領域における漏れ電流が小さいこと』などが挙げられます。また、瞬間的なパルス過電流印加に対しても強い構造となっています。そのことから、オーディオ分野における音質向上、静音設計が必要とされる機器向け、低誘電吸収特性によるPLLループフィルタのロックアップタイム短縮、低漏れ電流が求められるエネルギーハーベスト向けなど、その用途は多彩であり、更には車載用部品としても注目されています。積層セラミックコンデンサ(MLCC)やタンタルコンデンサからの置き換えも可能です。
 以下に、PMLCAPの特性・特長について、主に高誘電率系の積層セラミックコンデンサ(MLCC)との比較で説明します。

«インピーダンス/ESR特性»
 一例として35V10µF(5750サイズ)のインピーダンスと等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)の周波数特性を示します。PMLCAPはESRと等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)が小さく、良好な周波数特性を有します。

図2 インピーダンス及びESR周波数特性

図2 インピーダンス及びESR周波数特性

«直流バイアス特性»
 PMLCAPは、直流バイアスを印加しても高誘電率系のMLCCで見られるような圧電効果による静電容量の減少は無く、特性安定性に優れたコンデンサです。

図3 直流バイアス印加時の容量変化

図3 直流バイアス印加時の容量変化

 また、PMLCAPは直流バイアスを印加してもインピーダンス特性は変化しませんが、高誘電率系のMLCCでは直流バイアス印加によってインピーダンスカーブがシフトすると共に、インピーダンス特性に変曲点が現れる場合があります。

図4 直流バイアス印加時のインピーダンス周波数特性

図4 直流バイアス印加時のインピーダンス周波数特性

«温度特性»
 PMLCAP の-55ºCから+125ºCにおける温度係数は、約+520ppm/ºCとなっています。

図5 静電容量の温度特性

図5 静電容量の温度特性

«うなり音特性»
 PMLCAPは電歪効果を持たないため、うなり音を大幅に抑えることができ、機器自体の静音化を実現することができます。これに対し、高誘電率系のMLCCは電歪効果を持つため、大振幅のパルス信号が流れる回路ではコンデンサが振動してうなり音(鳴き)が発生し、問題となることがあります。

図6 うなり音比較

図6 うなり音比較

 また、下図は液晶バックライト回路へ実装し、稼働させたときに発生するうなり音の周波数分析結果の一例です。高誘電率系MLCCの音響雑音は圧電効果によるため、1kHz以上の中音域で大きくなります。人にとって耳障りな雑音は、数kHz帯であり、この帯域で発生する雑音が小さなコンデンサが望まれるため、PMLCAPの使用が有効です。

図7 液晶バックライト回路におけるうなり音の周波数分析例

図7 液晶バックライト回路におけるうなり音の周波数分析例

«高調波歪み率»
 音響機器においては歪み特性が原音再生を阻害する一要因となりうることから、音質が優先される高級音響機器を中心に低歪みのPMLCAPが採用されることが多くなっています。
 PMLCAPに対し、高誘電率系のMLCCは、電圧依存性(インピーダンスの変化)により、高調波歪み率が高くなる傾向があります。
 また、PMLCAPは、真空中での誘電体層と内部電極層の連続蒸着による積層体製造技術により、層間密着性が非常に高い構造となっているため、更には磁性体を排除した外部電極によって構成されているため、音質向上に効果を発揮します。

図8 高調波歪み率の比較

図8 高調波歪み率の比較

«振動によるC/N比への影響»
 回路に振動が加わった時のPLLシンセサイザーのVCOのC/N比の比較例を下図に示します。
PMLCAPは圧電効果を有しないため、C/N比の悪化が認められませんが、高誘電率系のMLCCは、圧電効果によりC/N比の悪化が見られます。これにより無線通信品質の劣化が発生します。

図9 振動によるC/N比への影響

図9 振動によるC/N比への影響

«誘電吸収特性»
 誘電体の分極が瞬時に起きず時間遅れを持つことが原因で誘電吸収(誘電体吸収ともいう)が悪化します。
 PMLCAPは誘電吸収が小さく、ポリエステルフィルムコンデンサとほぼ同等で、高誘電率系のMLCCに比べて大幅に優れており、PLLシンセサイザーのロックアップタイムの短縮などに効果を発揮します。

図10 誘電吸収の比較

図10 誘電吸収の比較

 一例としてPLLシンセサイザーで1.4GHzから1.5GHzに周波数を切り替えた時のロックアップタイムの比較を下図に示します。PMLCAPは短時間で1.5GHzに収束していますが、MLCCでは1.5GHzに収束していません。

図11  PLLシンセサイザーにおけるロックアップタイムの比較

図11  PLLシンセサイザーにおけるロックアップタイムの比較

«漏れ電流特性»
 MLCC・アルミ電解コンデンサ・タンタル電解コンデンサと比較して、高温度域でも高い絶縁抵抗を示すため、低漏れ電流となっています。このため、PMLCAPは微小な電力を扱うエネルギーハーベストの蓄電デバイスとして最適と言えます。

図12 漏れ電流の温度特性比較

図12 漏れ電流の温度特性比較

 下図は、25ºCと85ºCにおいてパルス電流(0-10V, 1kHz, Duty50%)を印加した時の環境発電の出力電圧を比較したものです。PMLCAPでは温度による出力電圧(8V)の変化が見られないのに対し、MLCCでは高温(85ºC)での漏れ電流の増加に伴い約1Vの出力電圧低下が見られます。

図13 パルス電流印加時の出力電圧比較

図13 パルス電流印加時の出力電圧比較

«はんだ耐熱性»
 PMLCAPは、誘電体材料に熱硬化性の高耐熱樹脂(分解温度約400ºC)を採用していることから、一般的な面実装タイプの積層フィルムコンデンサと比較して非常に優れた耐熱性を有します。はんだごてを5秒間製品本体に接触させた場合、通常の積層フィルムコンデンサは、接触部が溶解することによってショート故障に至りますが、PMLCAPは特性を保持します。
 また、リフロー、フロー、手はんだといった多様な実装形態に対応が可能であり、こうした混載基板での設計の自由度向上と機器の小型化に貢献します。

写真4 はんだ耐熱性比較写真4 はんだ耐熱性比較

写真4 はんだ耐熱性比較

表2 PMLCAP MUシリーズ はんだ条件

リフローピーク260ºC、2回
フローピーク260ºC、2回
手はんだこて先温度 350ºC


«自己回復性»
 PMLCAPの信頼性能のひとつとして、自己回復性(セルフヒーリング効果)があります。コンデンサに瞬間的な過電圧、大電流が印加された場合、欠陥部あるいは弱小部においてジュール熱による誘電体と周囲の電極材の消失により、絶縁性が回復します。あるいは、回復部に微少な絶縁破壊が生じた場合でも、ショートすることなく、ある一定の抵抗値を維持することにより、回路を完全故障から防ぐことができます。
 下図は、コンデンサの定格電圧(35V)を遙かに超える瞬間的な印加電圧(186V)の波形と、その電圧が2Ωの抵抗を介してPMLCAPに印加された時のPMLCAPの端子間電圧をモニタした波形です。電圧が印加された瞬間、PMLCAPの端子間電圧は一旦下降(絶縁低下)しますが、瞬時に元のレベルまで回復(自己回復)する様子が観察できます。

図14 過電圧印加における自己回復性

図14 過電圧印加における自己回復性

«たわみ耐性»
 誘電体材質の物性、外部電極構造により、PMLCAPは、たわみに対して高い耐応力性を有します。これに対し一般的な構造の積層セラミックコンデンサは、誘電体の柔軟性が低いためたわみ応力への耐性がなく、クラックが生じることによるショートリスクが存在します。

図15 たわみ耐性比較

図15 たわみ耐性比較

«耐湿性»
 PMLCAP標準品 MUシリーズは、小型・高耐熱のチップフィルムコンデンサとして市場での採用が拡大しています。しかしながら、耐湿性能保証条件は40ºC95%RHであるため、耐湿性能改善を望む声がありました。それを受け、耐湿性の高い新規の誘電体材料を採用して新たにリリースしたのがMSシリーズです。
 MSシリーズの耐湿性能保証条件は85ºC85%RH / 1,000時間であり、大幅な耐湿性能の改善を達成しています。これによって、高い耐環境性能が求められる車載用途や通信・産業機器用途でも今後採用が拡大すると期待されます。

図16 85ºC85%RH環境下における定格電圧印加試験(PMLCAP MSシリーズ)

図16 85ºC85%RH環境下における定格電圧印加試験(PMLCAP MSシリーズ)

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7. 代表的な用途

 代表的な用途として、高音質の特長を活かしたオーディオ機器、うなり音がほとんどない特長を活かした電源のパスコン、誘電吸収が小さい特長を活かしたPLL(Phase Lock Loop)のループフィルタ、低漏れ電流の特長を活かしたエネルギーハーベスト(環境発電)の蓄電用コンデンサなどがあります。

«オーディオ機器»
 PMLCAPはアンプの直流カット用カップリングコンデンサやD級アンプの出力フィルタに使用されます。音質としては、中高域の透明感が増します。また、出力フィルタに使用すると、容量変動がない(電圧依存性がない)ため歪みが小さくなり、音質が改善します。

図17 D級アンプの例

図17 D級アンプの例

«LEDバックライトドライバ»
 PMLCAPの誘電体である薄膜フィルムには圧電効果がなく、うなり音発生が少ない特長を活かし、大きなリプル電流が流れるLEDバックライト用DC-DCコンバータの入力と出力パスコンに使用することができます。LEDバックライトでは、調光に可聴周波数のPWM(Pulse Width Modulation)信号を用いるため、MLCCを使用すると、大きなうなり音に悩まされる場合があります。下図では、昇圧型コンバータのため入出力のパスコンに使用していますが、降圧型では入力のパスコンに使用します。

図18 LEDバックライトドライバの例

図18 LEDバックライトドライバの例

«PLLシンセサイザーのループフィルタ»
 PLLシンセサイザーのループフィルタに使用すると、高誘電率系のMLCCに比べて誘電吸収が小さいため、ロックアップタイムと呼ぶ周波数切り替え時間が大幅に短縮できます。また、PMLCAPは圧電効果がないため、振動によるC/N比の劣化が少なくなります。

図19 PLLシンセサイザーのループフィルタの例

図19 PLLシンセサイザーのループフィルタの例

«エネルギーハーベスト»
 PMLCAPは誘電体を薄膜フィルムで形成するため、漏れ電流が非常に小さく、しかも従来のフィルムコンデンサより小型・大容量である特長を有しています。そのため、微弱な電力を扱うエネルギーハーベスト«環境発電»の蓄電用コンデンサに適しています。

図20 エネルギーハーベスト ブロック図

図20 エネルギーハーベスト ブロック図

8. 使用上の注意

 PMLCAPの使用上の注意に関しましてはこちらをご覧ください。

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〒399-4593 長野県伊那市西箕輪1938-1 TEL:0265-72-7111 FAX:0265-73-2914