製品情報:フィルムコンデンサ

フィルムコンデンサ テクニカルノート

1. コンデンサの原理、基礎理論

1-1. コンデンサとは
  対向する導電体間に電圧を加えると,それらに挟まれた絶縁物質(または空間)が静電誘導作用により誘電分極を発生し,電荷が蓄積(充電)される。この充電及び蓄積電荷の放電作用を機能とする装置(部品)。


1-2. 静電容量とエネルギー

静電容量とエネルギー                    図1 分極の概念図

                                                                                図1 分極の概念図

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2. コンデンサ(固定)の種類

2-1. 誘電体による分類

誘電体による分類

図2 コンデンサの分類


2-2. 各種コンデンサの特性比較(概略)

表1 各種コンデンサの特性比較

サイズ周波数
特性
温度
特性
高電圧大容量寿命容量単価
フィルム××
アルミ非固体電解
アルミ固体電解
タンタル電解×
積層セラミック×

                                        優れる←◎○△×→劣る

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3. フィルムコンデンサの種類

3-1. 誘電体による分類

表2 誘電体による分類

    誘電体名称    略称備考
ポリエチレンテレフタレートPET商品名「マイラー」(デュポン)が有名
ポリプロピレンPP
ポリフェニレンスルフィドPPS
ポリエチレンナフタレートPEN
その他


3-2. 電極による分類

表3 電極による分類

電極分類材質
金属はく電極アルミニウム、スズ、銅 など
蒸着電極アルミニウム、亜鉛 など


3-3. 素子構造による分類

1)はく電極タブ構造                                                  2)蒸着電極構造

素子構造による分類

図3 素子構造

                            ①誘電体フィルム                    ⑤下塗り樹脂
                            ②保護フィルム                       ⑥外装樹脂
                            ③アルミ箔                             ⑦蒸着フィルム(メタライズドフィルム)
                            ④リード線                             ⑧溶射金属電極(メタリコン)


3-4. 外装による分類

        樹脂ディップ
        テープラップ樹脂封口
        非金属ケース樹脂封口
        金属ケースハーメチックシール
        樹脂モールド
        簡易外装(表面実装用チップ)

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4. 特性、性能

4-1. 誘電体フィルムの物性

表4 誘電体フィルムの物性

    特性    PETPPPPSPEN
厚さ(µm)3.0 - 122.2 - 124.0 - 124.0 - 12
最高使用温度(ºC)120 - 13080 - 105130 - 140120 - 140
比誘電率(1kHz@20ºC)3.22.232.9
誘電正接(1kHz@20ºC)0.0030.00020.00060.004
体積固有抵抗(Ωcm)>1018>1017>1017>1017
給水率(%@75%RH)0.4<0.010.050.3
ガラス転移点(ºC)69092121
AC破壊電圧(kV/mm)120 - 280200 - 400180300


4-2. 電気特性

図4-1 静電容量-温度特性 図4-2 誘電正接-温度特性

                   図4-1 静電容量-温度特性                                  図4-2 誘電正接-温度特性

図4-3 絶縁抵抗-温度特性 図4-4 周波数特性

                   図4-3 絶縁抵抗-温度特性                                  図4-4 周波数特性


4-3. 各種フィルムの特徴

表5 誘電体フィルムの特徴

    項目    PETPPPPSPEN
価格×
小型化
耐熱性
耐湿性
耐溶剤性
温度特性
低損失(低tanδ)
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5. 製造工程と品質のポイント(品種、工程別管理項目と影響特性)

5-1 はく電極タブ構造品

表6 電極構造品の製造工程と管理項目

表6 電極構造品の製造工程と管理項目


5-2. 蒸着電極構造品(リード線品)

表7 蒸着電極構造品(リード線品)の製造工程と管理項目

表7 蒸着電極構造品(リード線品)の製造工程と管理項目


5-3. 蒸着電極構造品(パワーフィルムコンデンサ)

表8 蒸着電極構造品(パワーフィルム)の製造工程と管理項目

表8 蒸着電極構造品(パワーフィルム)の製造工程と管理項目


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6. 用途

表9 誘電体、電極の種類と用途

表9 誘電体、電極の種類と用途

図5 使用例

図5 使用例

図5 使用例

図5 使用例

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7. 使用上の注意事項

フィルムコンデンサの使用上の注意に関しましてはこちらをご覧ください。

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8. 不具合事例

表10 フィルムコンデンサの故障要因と故障モード

表10 フィルムコンデンサの故障要因と故障モード

*) メタライズドフィルム(蒸着金属電極タイプ)の場合、耐電圧を超えた(又は耐電圧が下がり見かけ上超えた状態の)電圧が印加されるとセルフヒーリングが連続発生し、その際の放電エネルギーによってフィルムが溶融・炭化するため、完全ショートとはならず、抵抗値をもったショートとなります。
**)抵抗値をもったショートとなる際に、複数の要因が重なる場合や厳しい条件の場合には、発煙・発火することがあります。

・具体例
蒸着電極の製品が市場にて8年間稼動後オープンとなった。
 → 解析結果:蒸着金属がほとんど消失しており、高湿度環境下での使用が考えられます。

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9. 安全性、環境対応

9-1. 安全性
  蒸着電極タイプの発煙,発火対策
    ・充放電試験とtanδ測定の高周波化によるスクリーニング精度の向上
    ・蒸着パターンへの保安機構付与による安全性の向上(電気機器用,雑音防止用)

図6 保安機構の構造と破壊モード

図6 保安機構の構造と破壊モード


9-2. 環境対応

フィルムコンデンサの環境対応についてはこちらをご覧ください。

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10. 添付資料

10-1. コンデンサの寿命について

(1)印加電圧と寿命
  フィルムコンデンサの印加電圧と寿命については一般的に式4で表されます。

式4

(2)使用周囲温度と寿命
 フィルムコンデンサ寿命の温度依存性はアレニウスの法則に従い、これはいわゆる10ºC2倍則といわれるもので、温度10ºCの上昇で寿命は1/2となります。
従って、周囲温度と寿命の関係は、式5で与えられます。

式5

(3)故障率計算
 フィルムコンデンサは構造上電解液が使われていないため、アルミ電解コンデンサのように摩耗故障による寿命という概念が存在せず、一般的には故障率で表すことが合理的とされています。故障率は温度と電圧による依存性があり、文献等には以下に示す関係式(式6)により算出されるとありますが、これらによって算出される数値は推定値であり、これを保証するものではありません。

式6

(4)使用温度による定格電圧軽減
 コンデンサを高温で使用すると熱劣化によりコンデンサ寿命が低下します。高温でのご使用の場合は下記グラフに従いまして使用電圧を軽減してください。

図7-1,7-2

                図7-1                                                                図7-2
                摘要品種P2S                                                      摘要品種 / Application series
                                                                                        MPK,PCK,MMB,MMG,MMK,F2D

(5)リプル電流と寿命
 コンデンサにリプル電流が印加された場合ジュール熱を発生します。この時のコンデンサの温度上昇は、式7で与えられます。

式7

 コンデンサの自己発熱が大きいと、劣化、損傷の危険がありますので、コンデンサの自己温度上昇は、ポリエステルコンデンサが15ºC、ポリプロピレンコンデンサが10ºC以下の範囲内でご使用ください。
 高温-高周波での使用の場合は、直流電圧とは異なる電圧軽減率となります。これはリプル電流による発熱がアレニウスの10ºC2倍則よりも条件的に厳しくなる為と、ポリエステルフィルムなどは温度によりtanδが変化し、それにともない自己温度上昇が変化する為です。

(6)各種電圧波形に対する許容電圧について
 各種波形の許容電圧は、波形の種類、周波数によって異なります。各種波形における許容電圧は、各周波数の正弦波許容電圧に下記係数を乗じた範囲内とします。また、DCバイアス分を含む場合はDC定格電圧からバイアス電圧を引いた交流電圧を許容値とし、この電圧を各周波数、波形により軽減し、ご使用ください。
(電圧軽減曲線の電圧値が実効値で示されている場合には、許容電圧値を2√2倍した値がVp-pの値となり、それに下記係数を乗じた値がその波形でのある周波数における許容電圧値Vp-pとなります。)

表11 許容電圧係数

表11 許容電圧係数


10-2. セルフヒーリング(自己回復)について
 セルフヒーリングとは、電極が誘電体上に非常に薄い金属(約150~400Å)にて蒸着されている為に、誘電体内の最弱点部において絶縁破壊があった場合でも、絶縁破壊の瞬間に流れる大電流によって弱点部の周辺だけが飛散し、コンデンサとしての機能までは喪失しない現象のことです。
 セルフヒーリング性は蒸着抵抗が高く蒸着膜が薄いほど優れていますが、逆にメタリコンとの接続性及び高周波域でのESR増加を招くために、その設計には使用用途を十分検討する必要があります。

図8 蒸着抵抗とAC破壊電圧

図8 蒸着抵抗とAC破壊電圧


セルフヒーリング状態

写真1 セルフヒーリング状態

※セルフヒーリングはコンデンサの絶縁が回復することであり、消失した蒸着金属膜が塞がって回復するこということではありません(絶縁欠陥部周辺の蒸着金属膜が局所的に開放されることにより絶縁が回復する)。

【参考文献】 ・小野 勇:コンデンサ活用マニュアル  東京電機大学出版局 1975
・益田 他:デバイス・部品の選び方・使い方  日科技連出版社 1993
・電子デバイスデータブック85 回路部品編 NEC 1985
・EIAJ RCR-2350D 電子機器固定プラスチックフィルムコンデンサ
    使用上の注意事項ガイドライン  日本電子機会工業会 2012

【その他参考書】
CQ出版社発行の次の書籍など
・波形で学ぶ電子部品の特性と実力  ・わかる電子部品の基礎と活用法
・電子回路部品活用ハンドブック  ・わかる電子回路部品完全図鑑
・抵抗&コンデンサの適材適所  ・受動部品の選び方と活用ノウハウ



フィルムコンデンサの諸特性
各種コンデンサ特性の代表例を以下に示します。試料はいずれも0.1µFです。    PDFはこちら 

フィルムコンデンサの諸特性

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